JOURNAL

2025
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12
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22
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「もしかして、更年期?」ねむりの変化は、体からのサインかもしれない

「なんだか最近、寝つきが悪い」「夜中に何度も目が覚めてしまう」。 年齢を重ねるにつれて感じる、ねむりの質の変化。その原因を「歳のせい」とやり過ごしていませんか。でも、もしその不調が、女性のライフサイクルにおいて避けては通れない「更年期」と、深く関わっているとしたら。 今回は、「更年期」と、「ねむり」の深い関係について考えます。

※このコラムは、ポッドキャスト「わたしとねむり研究所~女性がよく寝てよく働けるラジオ~の配信を記事化したものです。

ポッドキャストの視聴はこちらから

そもそも「更年期」ってなんだろう? 多くの人が知らない、その正体

ところで皆さん、「更年期」について、どれくらい知っていますか?ホットフラッシュや理由のわからない気分の浮き沈みなど、なんとなくイメージはあっても、その実態を知る機会は意外と少ないものです。職場でちょっとイライラしていたら、同僚に「更年期?」と聞かれて、思わずモヤっとした…。周囲の理解不足から、そんな経験をした方もいるかもしれません。

ここでまず知っておきたいのは、「更年期」は限られた人の特別な病気ではないということ。「思春期」のように、更年期もまた、誰もに訪れる自然なライフステージのひとつなのです。定義上は、月経が終わる「閉経」を挟んだ前後約5年ずつ、あわせて約10年間を「更年期」と呼びます。

「私は更年期がなかった」という声を聞くこともありますが、正確には“更年期という時期がなかった”わけではありません。その時期にあらわれる心身の不調、いわゆる「更年期症状」の出方には個人差があるため、「特に何も感じなかった」という人もいる、というだけなのです。事実、更年期症状は200種類以上ともいわれ、更年期世代の9割以上の方が何らかの症状を経験しているという調査もあります。

とはいえ、その症状に気づくのは簡単ではありません。閉経を迎えたあとで「あのときの不調は更年期の影響だったのかも」と思いあたることはあっても、閉経のタイミングは事前にわからず、体調の変化をすぐに“更年期”と結びつけるのは難しいからです。

だからこそ、「なんとなく不調が続く」「私、何か変わってしまったのかもしれない…」。そう思い悩んでしまう前に、「これは更年期という“時期”がもたらす変化なのかもしれない」と知っておく。それだけで心が少し軽くなるはずです。

なぜ女性は変化が大きい? ジェットコースターのようなホルモンの波

「更年期」は女性だけに訪れるものではありません。それなのに、「更年期=女性」という印象が強いのはなぜでしょうか。

その理由のひとつには、女性と男性の更年期には生物学的に大きな違いがあり、女性の方が顕著に症状が表れやすいことが挙げられます。その違いのカギを握るのが、性ホルモンの減少の仕方です。

思春期に増え始め、成熟期にピークを迎えた性ホルモンは、更年期を境に減少していきます。男性の場合は、加齢とともに少しずつ“緩やか”に減っていくのに対し、女性は閉経前後の10年ほどの間に急激に下落。まるで“ジェットコースター”のように、短期間で一気に落ちていくのです。

このような急激なホルモン減少は、女性の心身に大きなゆらぎをもたらします。特に閉経が近づくと、生理周期や体調にさまざまな変化が現れます。たとえば、これまで規則的だった生理周期が突然短くなったり、逆に間隔が長くなったり。出血量が急に増え、そのまま閉経を迎えるという人もいます。

閉経のプロセスひとつとっても、本当に人それぞれなのです。

更年期とねむりの深い関係。見えてきた「不調のリアル」

女性ホルモンの急激な変化によって、心や体にさまざまな不調があらわれる更年期。ここからは、その更年期とねむりが、どのように関係しているのかを見ていきます。

日本産婦人科学会は、更年期を迎えた女性の約4〜6割が、なんらかの睡眠の悩みを抱えていると発表しています。私たちはその実態をもっと詳しく知るために、令和5年度「フェムテック等サポートサービス実証事業補助金」に採択されて、「働く更年期世代女性の不調症状と睡眠に関する研究」を実施しました。

まず、「アテネ不眠尺度(AIS)※」とよばれる世界的な指標を使って、参加者の睡眠状態を調査しました。「夜中に途中で目が覚めることがありますか?」など、8つの質問を通して参加者たちの睡眠を評価したところ、なんと更年期世代の73%もの人が「不眠症の可能性がある」という結果がでました。

また、この調査では、「更年期症状の重さ」と「不眠の程度」との間にも深い関わりがあることがあきらかに。更年期の体調変化を測る「簡略更年期指数」と、アテネ不眠尺度を照らし合わせたところ、「更年期の症状が重い人ほど、不眠の症状も重い」という相関関係が見られたのです。

「更年期とねむりの関連性」が、女性たちのリアルな声と睡眠状態の調査によって結びつき、データとして“見えるかたち”になった瞬間でした。

「知ること」から始まる変化。セルフケアとねむり改善のヒント

今回の研究で、私たちがもうひとつ注目したのが、「セルフケア」と「更年期に対する理解度」の関連性です。調査の中で見えてきたのは、日ごろからセルフケアを実践している人ほど、自分の体や更年期についてよく理解しているという傾向でした。

正直なところ「知っていたからこそ、セルフケアを始めた」のか、「ケアを続ける中で理解が深まっていった」のか、その順番まではわかりません。けれど、はっきり言えるのは「知ること」と「自分を大切にする行動」はつながっているということ。知識とケアが連動する、前向きでポジティブな関係性が見えてきたのです。

こうした気づきをもとに、私たちは、ひとりひとりに寄り添うかたちで健康管理をサポートする「更年期世代女性の不調サポートプログラム」を開発。このプログラムは、ただ「もっと寝ましょう!」と呼びかけるのではなく、その人の生活リズムや環境、悩みに合わせて、多角的にねむりを見つめ直すことを目指したものでした。

<プログラムのステップ>

1.基礎的なリテラシーの習得:動画など、更年期やねむりに関する正しい知識を学ぶ
2.ねむりの可視化:計測デバイスを使って、自分の睡眠状態を客観的に把握する
3.専門家とのカウンセリング:専門家と直接話し、自分に合ったアドバイスを受ける

専門家とのカウンセリングでは、「このぐらいの症状で病院に行っていいかどうかわからない」「誰に話せばいいのか…」といった参加者のリアルな悩みも。多くの女性が抱える不調に耳を傾ける場になったことも、このプログラムの大きな意味のひとつでした。

<プログラム実施後の改善効果>
A郡「基礎知識の習得」と「ねむりの可視化」のみ
B群 「基礎知識の習得」と「ねむりの可視化」に加えてカウンセリングや個別アドバイスを実施

     

<結果>

多くの方が、自分の「ねむり」について何らかの前向きな変化を感じていました。なかでも印象的だったのは、その効果が段階的にあらわれたことです。

A郡「基礎知識の習得」と「ねむりの可視化」のみ
不眠の指標に変化が。自身の生活習慣と睡眠の関係に気づくことで、自ずと行動が変わっていった。

B群
カウンセリングや個別アドバイスを取り入れたより大きな変化につながった。夜中に目が覚める「中途覚醒」の時間が30分ほど短くなったり、「寝つきまでの時間」が短縮したという声も。

ひとつの不調の裏にある、複雑な絡み合い

更年期の不調は、単純に「1+1=2」という世界ではありません。

ホルモンの変化、仕事や家庭のストレス、そしてねむりの問題。様々な要素が複合的に絡み合って、一人の女性の「今の不調」を作り上げています。しかし、それは裏を返せば、「どこかひとつ改善の糸口を見つけられると、複合的に良い方向に向かう」可能性がある、ということなのかもしれません。

もしあなたが今、原因のわからない不調や、ねむりの変化を感じているなら、それは更年期による体からの大切なサインかもしれません。まずは、自分の心と体に起きていることを「知る」ことから始めてみませんか。

※)アテネ不眠尺度(AIS)… WHO(世界保健機関)が中心となり設立した「睡眠と健康に関する世界プロジェクト」が作成した世界共通の不眠症判定法。

※このコラムは、ポッドキャスト「わたしとねむり研究所~女性がよく寝てよく働けるラジオ~の配信を記事化したものです。

ポッドキャストの視聴はこちらから

そもそも「更年期」ってなんだろう? 多くの人が知らない、その正体

ところで皆さん、「更年期」について、どれくらい知っていますか?ホットフラッシュや理由のわからない気分の浮き沈みなど、なんとなくイメージはあっても、その実態を知る機会は意外と少ないものです。職場でちょっとイライラしていたら、同僚に「更年期?」と聞かれて、思わずモヤっとした…。周囲の理解不足から、そんな経験をした方もいるかもしれません。

ここでまず知っておきたいのは、「更年期」は限られた人の特別な病気ではないということ。「思春期」のように、更年期もまた、誰もに訪れる自然なライフステージのひとつなのです。定義上は、月経が終わる「閉経」を挟んだ前後約5年ずつ、あわせて約10年間を「更年期」と呼びます。

「私は更年期がなかった」という声を聞くこともありますが、正確には“更年期という時期がなかった”わけではありません。その時期にあらわれる心身の不調、いわゆる「更年期症状」の出方には個人差があるため、「特に何も感じなかった」という人もいる、というだけなのです。事実、更年期症状は200種類以上ともいわれ、更年期世代の9割以上の方が何らかの症状を経験しているという調査もあります。

とはいえ、その症状に気づくのは簡単ではありません。閉経を迎えたあとで「あのときの不調は更年期の影響だったのかも」と思いあたることはあっても、閉経のタイミングは事前にわからず、体調の変化をすぐに“更年期”と結びつけるのは難しいからです。

だからこそ、「なんとなく不調が続く」「私、何か変わってしまったのかもしれない…」。そう思い悩んでしまう前に、「これは更年期という“時期”がもたらす変化なのかもしれない」と知っておく。それだけで心が少し軽くなるはずです。

なぜ女性は変化が大きい? ジェットコースターのようなホルモンの波

「更年期」は女性だけに訪れるものではありません。それなのに、「更年期=女性」という印象が強いのはなぜでしょうか。

その理由のひとつには、女性と男性の更年期には生物学的に大きな違いがあり、女性の方が顕著に症状が表れやすいことが挙げられます。その違いのカギを握るのが、性ホルモンの減少の仕方です。

思春期に増え始め、成熟期にピークを迎えた性ホルモンは、更年期を境に減少していきます。男性の場合は、加齢とともに少しずつ“緩やか”に減っていくのに対し、女性は閉経前後の10年ほどの間に急激に下落。まるで“ジェットコースター”のように、短期間で一気に落ちていくのです。

このような急激なホルモン減少は、女性の心身に大きなゆらぎをもたらします。特に閉経が近づくと、生理周期や体調にさまざまな変化が現れます。たとえば、これまで規則的だった生理周期が突然短くなったり、逆に間隔が長くなったり。出血量が急に増え、そのまま閉経を迎えるという人もいます。

閉経のプロセスひとつとっても、本当に人それぞれなのです。

更年期とねむりの深い関係。見えてきた「不調のリアル」

女性ホルモンの急激な変化によって、心や体にさまざまな不調があらわれる更年期。ここからは、その更年期とねむりが、どのように関係しているのかを見ていきます。

日本産婦人科学会は、更年期を迎えた女性の約4〜6割が、なんらかの睡眠の悩みを抱えていると発表しています。私たちはその実態をもっと詳しく知るために、令和5年度「フェムテック等サポートサービス実証事業補助金」に採択されて、「働く更年期世代女性の不調症状と睡眠に関する研究」を実施しました。

まず、「アテネ不眠尺度(AIS)※」とよばれる世界的な指標を使って、参加者の睡眠状態を調査しました。「夜中に途中で目が覚めることがありますか?」など、8つの質問を通して参加者たちの睡眠を評価したところ、なんと更年期世代の73%もの人が「不眠症の可能性がある」という結果がでました。

また、この調査では、「更年期症状の重さ」と「不眠の程度」との間にも深い関わりがあることがあきらかに。更年期の体調変化を測る「簡略更年期指数」と、アテネ不眠尺度を照らし合わせたところ、「更年期の症状が重い人ほど、不眠の症状も重い」という相関関係が見られたのです。

「更年期とねむりの関連性」が、女性たちのリアルな声と睡眠状態の調査によって結びつき、データとして“見えるかたち”になった瞬間でした。

「知ること」から始まる変化。セルフケアとねむり改善のヒント

今回の研究で、私たちがもうひとつ注目したのが、「セルフケア」と「更年期に対する理解度」の関連性です。調査の中で見えてきたのは、日ごろからセルフケアを実践している人ほど、自分の体や更年期についてよく理解しているという傾向でした。

正直なところ「知っていたからこそ、セルフケアを始めた」のか、「ケアを続ける中で理解が深まっていった」のか、その順番まではわかりません。けれど、はっきり言えるのは「知ること」と「自分を大切にする行動」はつながっているということ。知識とケアが連動する、前向きでポジティブな関係性が見えてきたのです。

こうした気づきをもとに、私たちは、ひとりひとりに寄り添うかたちで健康管理をサポートする「更年期世代女性の不調サポートプログラム」を開発。このプログラムは、ただ「もっと寝ましょう!」と呼びかけるのではなく、その人の生活リズムや環境、悩みに合わせて、多角的にねむりを見つめ直すことを目指したものでした。

<プログラムのステップ>

1.基礎的なリテラシーの習得:動画など、更年期やねむりに関する正しい知識を学ぶ
2.ねむりの可視化:計測デバイスを使って、自分の睡眠状態を客観的に把握する
3.専門家とのカウンセリング:専門家と直接話し、自分に合ったアドバイスを受ける

専門家とのカウンセリングでは、「このぐらいの症状で病院に行っていいかどうかわからない」「誰に話せばいいのか…」といった参加者のリアルな悩みも。多くの女性が抱える不調に耳を傾ける場になったことも、このプログラムの大きな意味のひとつでした。

<プログラム実施後の改善効果>
A郡「基礎知識の習得」と「ねむりの可視化」のみ
B群 「基礎知識の習得」と「ねむりの可視化」に加えてカウンセリングや個別アドバイスを実施

     

<結果>

多くの方が、自分の「ねむり」について何らかの前向きな変化を感じていました。なかでも印象的だったのは、その効果が段階的にあらわれたことです。

A郡「基礎知識の習得」と「ねむりの可視化」のみ
不眠の指標に変化が。自身の生活習慣と睡眠の関係に気づくことで、自ずと行動が変わっていった。

B群
カウンセリングや個別アドバイスを取り入れたより大きな変化につながった。夜中に目が覚める「中途覚醒」の時間が30分ほど短くなったり、「寝つきまでの時間」が短縮したという声も。

ひとつの不調の裏にある、複雑な絡み合い

更年期の不調は、単純に「1+1=2」という世界ではありません。

ホルモンの変化、仕事や家庭のストレス、そしてねむりの問題。様々な要素が複合的に絡み合って、一人の女性の「今の不調」を作り上げています。しかし、それは裏を返せば、「どこかひとつ改善の糸口を見つけられると、複合的に良い方向に向かう」可能性がある、ということなのかもしれません。

もしあなたが今、原因のわからない不調や、ねむりの変化を感じているなら、それは更年期による体からの大切なサインかもしれません。まずは、自分の心と体に起きていることを「知る」ことから始めてみませんか。

※)アテネ不眠尺度(AIS)… WHO(世界保健機関)が中心となり設立した「睡眠と健康に関する世界プロジェクト」が作成した世界共通の不眠症判定法。

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