
JOURNAL


寝付きが悪い、朝がだるい、午後になるとねむくなる……。 病院に行くほどでもないけれど、ねむりにまつわる悩みを抱えている人は少なくないのではないでしょうか? わたしとねむり研究所では、そんな悩みを持つ働く女性を対象に「睡眠カウンセリング」を行っています。今回は、日々一人ひとりのお悩みに寄り添うカウンセリング担当のスタッフによる対談会を実施しました。 人が「つい」やってしまう習慣をあたたかく受け止めながら、少しずつ前向きな眠りへと導く。そんなカウンセリングの現場から見えてきた、“自分を責めずにねむりを整える”ためのヒントをお届けします。
小柴薫
公認心理師×睡眠改善インストラクター
看護師、公認心理師、睡眠改善インストラクターメノポーズカウンセラー
医療機関での勤務を経て、現在はパラマウントベッド株式会社 睡眠研究所にて睡眠計測センサーの活用支援や、睡眠・更年期カウンセリングに従事。睡眠や更年期に関する専門知識を活かし、クライアントの心身の健康をサポートしている。
※公認心理師は、心理学の専門知識と技術を用いて、心の健康や発達を支援する国家資格の心理専門職です。
岩井文
睡眠改善インストラクター フェムテックエキスパート2級
パラマウントベッド株式会社に入社 デザイン部に配属
製品やサービスのデザイン・企画に従事 周産期や母子ケア領域を担当
2024年より経営企画本部に異動・女性の健康課題とねむりに関する新規事業の開発推進、調査や啓蒙活動に取り組む。
――睡眠カウンセリングが生まれたきっかけを教えてください。
岩井:私たちは「睡眠」を軸とした価値提供を模索するなかで、多くの更年期世代の女性たちと対話を重ねてきました。すると、不眠と健康課題には深い関係があることが見えてきたんです。
睡眠へのアプローチが、女性の健康全体を底上げするきっかけになるかもしれない。そんな想いから、更年期世代の女性と職場を支援する法人向けフェムテックサービス「伴走支援プログラム」の一環として、睡眠カウンセリングを始めました。
――カウンセリングはどのような形で行われているのですか?
岩井:睡眠は、生活リズムやライフスタイルなど個人情報に深く関わることなので、セキュリティで保護されたオンライン上で個別カウンセリングを行っています。私たちスタッフに加え、女性の健康や更年期、睡眠に詳しい専門家とも連携し、チームでサポートしています。
小柴:ねむりを少し見直すことで、心身の不調が和らぐケースも少なくないんです。ですから私たちも、睡眠に関するお悩みだけでなく、その方の体調や心の状態にまで寄り添ったカウンセリングを心がけていますね。
――睡眠カウンセリングを受ける場合、どのような準備が必要になりますか?
岩井:前もって2つの準備をお願いしています。1つ目は、不眠度を主観的に測る質問や日常の生活習慣をお聞きする「事前アンケート」。2つ目は、シート型の睡眠センサー「アクティブスリープアナライザー」を使ったデータ計測です。マットレスや布団の下に敷くだけで使える薄型のセンサーをお貸し出しし、2〜3週間ほどご自身の睡眠データを取っていただきます。
こうして睡眠を“見える化”すると、「寝不足だと思っていたけど、実はしっかり眠れていた」と気づかれる方も少なくありません。
小柴:データとして可視化されることで安心材料にもなりますよね。カウンセリング後には「睡眠レポート」もお渡しして、ご自身のねむりを振り返るきっかけにしていただいています。

ーーカウンセリングには、どのようなお悩みを持った方がいらっしゃるのですか?
小柴:本当にさまざまですね。たとえば子育て世代の多い30代だと、「夜間授乳や寝かしつけ」でねむれないという悩みが多く、もう少し上の世代になると、「体調のゆらぎや親の介護」による睡眠不足が出てきます。その方の年齢や社会的役割が、ねむりの課題と密接にかかわっていると感じます。
岩井 :たしかに。特に働く女性は、育児・家事・仕事など多くの役割を抱え、睡眠時間を削らざるを得なくなっている方が多いですよね。
小柴:あとは、世代に限らず「睡眠によくない習慣をやめられない」というご相談もよく受けますね。この手のお悩みの解決は本当に難しいなぁと……。
ーー「睡眠によくない習慣」ですか?
岩井:代表的なのは、寝る前のスマホやお酒です。とはいえ、帰宅後のスマホ時間が唯一の自分時間だったり、寝る前の一杯のお酒が明日への活力になっていたりする方も多いですよね。
皆さん、その習慣が睡眠によくないことは自覚している。けれど、心のバランスを保つために必要なんですよね。だからこそ私たちは、現状を否定せず「完全にやめなくても、どうすれば少しでも眠りを整えられるか」をともに考えるようにしています。
小柴:睡眠改善のセオリーはありますが「大切な自分時間」を犠牲にしてまで押し付けることはしません。あくまで本人の志向や生活習慣に合わせ、改善のヒントを提案することを心がけています。
ーー世界的に見ても、日本人は睡眠時間が短いといわれています。カウンセリングでもそれを実感されますか?
小柴:強く感じますね。6時間半から8時間ほどの睡眠をとっていただくのが理想ですが、それを下回る方が多い印象です。
「今は頑張る時期だから」と睡眠時間を削る方もいますが、10年、20年後に体調不良として現れる可能性もあるので、おすすめしたくはありません。
ーーご本人が「ねむくならないし、大丈夫」と感じている場合、カウンセリングではどのようなアプローチするのですか?
岩井:中にはもともと「ショートスリーパー体質」の方もいますが、ほとんどはご自身でそう思い込んでいるだけなんです。ですから私たちは、まず対話を通して睡眠不足による体からのサインに気づいてもらうようにしています。
たとえば「日中はどのように過ごしていますか?」と質問してみて、「通勤電車でウトウトする」「食後の会議で意識が飛ぶ」などのエピソードがあれば、それは“体からの危険信号”。「睡眠が足りていないよ」と教えてくれている証拠なんです。
睡眠時間には個人差があり、日中の活動量や疲労度、運動習慣によっても変化します。だからこそ、一般的な目安に頼るのではなく、カウンセリングを通じてその方にとって最適な睡眠時間を一緒に見つけることが大切なんですよね。
小柴:その通りですね。時間より大切なのは「日中に不調なく過ごせているかどうか」。ここに、改善のヒントが隠れています。
ーー実際にカウンセリングを受けた方には、どのような反応や変化が見られるのですか?
小柴:カウンセリングでは「何か試せそうなことはありますか?」とご提案するのですが、実際に生活習慣の改善に取り組み、効果を感じて継続される方もいらっしゃいます。そもそも、睡眠や不調に“特効薬”はありません。小さな一歩の積み重ねが、体調を上向かせる大きな可能性になるんです。
そのためにもまず、よくねむれた日とそうでない日の“差分”をご自身で体感してもらうことが重要なのかなと。不調時に「良い時の自分はこうしていたな」と思い出せる引き出しを持つ。それだけで体調の立て直しがしやすくなりますから。
岩井:カウンセリングをきっかけに、自分なりの“立て直しルーティーン”を探す方もいらっしゃいますよね。寝る前の儀式を決めたり、アロマを焚いたり。楽しみが増えることで、毎日の睡眠が「自分を労わる時間」へと変わっていくはずです。

ーーお二人の今後の目標を教えてください。
小柴:睡眠に不調を感じたとき、多くの方は「病院で薬を処方してもらおう」と考えるかもしれません。ですが、「そこまでではないけれど、少しねむりを見直したい」方が気軽に相談できるところは、まだ十分にありません。
私たちが目指すのは、そんな方々が安心して立ち寄れる“ねむりの相談所”のような場所。今の取り組みを広め、ねむりについてもっと気軽に話せる社会にしていきたいですね。
岩井:今後は、腸内環境や日中の活動など、睡眠と相互に作用するさまざまな要素も組み込み、プログラムをさらにブラッシュアップしていくつもりです。睡眠に課題を感じている方だけでなく、潜在層も含めてより幅広い層にアプローチしていけたらうれしいですね。
ーー最後に、読者の方にむけてメッセージをお願いします。
岩井 :働く女性が増える昨今、活躍の場が広がる一方で、無理を重ねている方が本当に多いと感じます。けれど、その無理が更年期や老年期にどう影響するのか、今一度立ち止まって考えてほしいんです。
長生きが当たり前の時代だからこそ、健康でアクティブなシニア世代になるために。そして、将来やりたいことを思いっきり楽しむために、今、何に投資すべきかを考えていただけたらと思います。
このカウンセリングが、働く女性たちにとって「10年後の自分」を考えるきっかけになることを心から願っています。
小柴薫
公認心理師×睡眠改善インストラクター
看護師、公認心理師、睡眠改善インストラクターメノポーズカウンセラー
医療機関での勤務を経て、現在はパラマウントベッド株式会社 睡眠研究所にて睡眠計測センサーの活用支援や、睡眠・更年期カウンセリングに従事。睡眠や更年期に関する専門知識を活かし、クライアントの心身の健康をサポートしている。
※公認心理師は、心理学の専門知識と技術を用いて、心の健康や発達を支援する国家資格の心理専門職です。
岩井文
睡眠改善インストラクター フェムテックエキスパート2級
パラマウントベッド株式会社に入社 デザイン部に配属
製品やサービスのデザイン・企画に従事 周産期や母子ケア領域を担当
2024年より経営企画本部に異動・女性の健康課題とねむりに関する新規事業の開発推進、調査や啓蒙活動に取り組む。
――睡眠カウンセリングが生まれたきっかけを教えてください。
岩井:私たちは「睡眠」を軸とした価値提供を模索するなかで、多くの更年期世代の女性たちと対話を重ねてきました。すると、不眠と健康課題には深い関係があることが見えてきたんです。
睡眠へのアプローチが、女性の健康全体を底上げするきっかけになるかもしれない。そんな想いから、更年期世代の女性と職場を支援する法人向けフェムテックサービス「伴走支援プログラム」の一環として、睡眠カウンセリングを始めました。
――カウンセリングはどのような形で行われているのですか?
岩井:睡眠は、生活リズムやライフスタイルなど個人情報に深く関わることなので、セキュリティで保護されたオンライン上で個別カウンセリングを行っています。私たちスタッフに加え、女性の健康や更年期、睡眠に詳しい専門家とも連携し、チームでサポートしています。
小柴:ねむりを少し見直すことで、心身の不調が和らぐケースも少なくないんです。ですから私たちも、睡眠に関するお悩みだけでなく、その方の体調や心の状態にまで寄り添ったカウンセリングを心がけていますね。
――睡眠カウンセリングを受ける場合、どのような準備が必要になりますか?
岩井:前もって2つの準備をお願いしています。1つ目は、不眠度を主観的に測る質問や日常の生活習慣をお聞きする「事前アンケート」。2つ目は、シート型の睡眠センサー「アクティブスリープアナライザー」を使ったデータ計測です。マットレスや布団の下に敷くだけで使える薄型のセンサーをお貸し出しし、2〜3週間ほどご自身の睡眠データを取っていただきます。
こうして睡眠を“見える化”すると、「寝不足だと思っていたけど、実はしっかり眠れていた」と気づかれる方も少なくありません。
小柴:データとして可視化されることで安心材料にもなりますよね。カウンセリング後には「睡眠レポート」もお渡しして、ご自身のねむりを振り返るきっかけにしていただいています。

ーーカウンセリングには、どのようなお悩みを持った方がいらっしゃるのですか?
小柴:本当にさまざまですね。たとえば子育て世代の多い30代だと、「夜間授乳や寝かしつけ」でねむれないという悩みが多く、もう少し上の世代になると、「体調のゆらぎや親の介護」による睡眠不足が出てきます。その方の年齢や社会的役割が、ねむりの課題と密接にかかわっていると感じます。
岩井 :たしかに。特に働く女性は、育児・家事・仕事など多くの役割を抱え、睡眠時間を削らざるを得なくなっている方が多いですよね。
小柴:あとは、世代に限らず「睡眠によくない習慣をやめられない」というご相談もよく受けますね。この手のお悩みの解決は本当に難しいなぁと……。
ーー「睡眠によくない習慣」ですか?
岩井:代表的なのは、寝る前のスマホやお酒です。とはいえ、帰宅後のスマホ時間が唯一の自分時間だったり、寝る前の一杯のお酒が明日への活力になっていたりする方も多いですよね。
皆さん、その習慣が睡眠によくないことは自覚している。けれど、心のバランスを保つために必要なんですよね。だからこそ私たちは、現状を否定せず「完全にやめなくても、どうすれば少しでも眠りを整えられるか」をともに考えるようにしています。
小柴:睡眠改善のセオリーはありますが「大切な自分時間」を犠牲にしてまで押し付けることはしません。あくまで本人の志向や生活習慣に合わせ、改善のヒントを提案することを心がけています。
ーー世界的に見ても、日本人は睡眠時間が短いといわれています。カウンセリングでもそれを実感されますか?
小柴:強く感じますね。6時間半から8時間ほどの睡眠をとっていただくのが理想ですが、それを下回る方が多い印象です。
「今は頑張る時期だから」と睡眠時間を削る方もいますが、10年、20年後に体調不良として現れる可能性もあるので、おすすめしたくはありません。
ーーご本人が「ねむくならないし、大丈夫」と感じている場合、カウンセリングではどのようなアプローチするのですか?
岩井:中にはもともと「ショートスリーパー体質」の方もいますが、ほとんどはご自身でそう思い込んでいるだけなんです。ですから私たちは、まず対話を通して睡眠不足による体からのサインに気づいてもらうようにしています。
たとえば「日中はどのように過ごしていますか?」と質問してみて、「通勤電車でウトウトする」「食後の会議で意識が飛ぶ」などのエピソードがあれば、それは“体からの危険信号”。「睡眠が足りていないよ」と教えてくれている証拠なんです。
睡眠時間には個人差があり、日中の活動量や疲労度、運動習慣によっても変化します。だからこそ、一般的な目安に頼るのではなく、カウンセリングを通じてその方にとって最適な睡眠時間を一緒に見つけることが大切なんですよね。
小柴:その通りですね。時間より大切なのは「日中に不調なく過ごせているかどうか」。ここに、改善のヒントが隠れています。
ーー実際にカウンセリングを受けた方には、どのような反応や変化が見られるのですか?
小柴:カウンセリングでは「何か試せそうなことはありますか?」とご提案するのですが、実際に生活習慣の改善に取り組み、効果を感じて継続される方もいらっしゃいます。そもそも、睡眠や不調に“特効薬”はありません。小さな一歩の積み重ねが、体調を上向かせる大きな可能性になるんです。
そのためにもまず、よくねむれた日とそうでない日の“差分”をご自身で体感してもらうことが重要なのかなと。不調時に「良い時の自分はこうしていたな」と思い出せる引き出しを持つ。それだけで体調の立て直しがしやすくなりますから。
岩井:カウンセリングをきっかけに、自分なりの“立て直しルーティーン”を探す方もいらっしゃいますよね。寝る前の儀式を決めたり、アロマを焚いたり。楽しみが増えることで、毎日の睡眠が「自分を労わる時間」へと変わっていくはずです。

ーーお二人の今後の目標を教えてください。
小柴:睡眠に不調を感じたとき、多くの方は「病院で薬を処方してもらおう」と考えるかもしれません。ですが、「そこまでではないけれど、少しねむりを見直したい」方が気軽に相談できるところは、まだ十分にありません。
私たちが目指すのは、そんな方々が安心して立ち寄れる“ねむりの相談所”のような場所。今の取り組みを広め、ねむりについてもっと気軽に話せる社会にしていきたいですね。
岩井:今後は、腸内環境や日中の活動など、睡眠と相互に作用するさまざまな要素も組み込み、プログラムをさらにブラッシュアップしていくつもりです。睡眠に課題を感じている方だけでなく、潜在層も含めてより幅広い層にアプローチしていけたらうれしいですね。
ーー最後に、読者の方にむけてメッセージをお願いします。
岩井 :働く女性が増える昨今、活躍の場が広がる一方で、無理を重ねている方が本当に多いと感じます。けれど、その無理が更年期や老年期にどう影響するのか、今一度立ち止まって考えてほしいんです。
長生きが当たり前の時代だからこそ、健康でアクティブなシニア世代になるために。そして、将来やりたいことを思いっきり楽しむために、今、何に投資すべきかを考えていただけたらと思います。
このカウンセリングが、働く女性たちにとって「10年後の自分」を考えるきっかけになることを心から願っています。
この記事は
わたしとねむり研究所会員限定記事です。
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